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2011.01.30

孤宿の人

孤宿の人 上孤宿の人 上
(2005/06/21)
宮部 みゆき

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孤宿の人 下孤宿の人 下
(2005/06/21)
宮部 みゆき

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主人公の「ほう」は、阿呆の「ほう」という名を持つ幼い女の子。
厄介払いで金比羅参りに出され、丸海で置き去りにされるが、縁あって匙(医師)の井上家で下女として奉公する。人一倍"遅れている"ほうは、以前の奉公先で苛められたが
今の奉公先、井上家では読み書きを教えられたり優しく扱われて平穏に過ごしていた。
ところがある日突然事件は起こる。
同時期に江戸から乱心して妻と子供2人、家来3人を殺害した元勘定奉行の加賀という男が丸海藩に流されてきた。丸海藩が預かることとなった加賀殿・・幽閉場所は15年前に奇妙な病気が流行り
家人ほぼ死んでしまったという曰くのある浅木家の別邸、涸滝。
加賀殿がやってきた事により、丸海藩では様々な災厄に見舞われるが-----

またも読んでしまいました(?)宮部みゆき氏時代物!
上下巻ということで『ぼんくら』『日暮らし』を思い出しますが(え)、今回もまた面白かった!
似たようなパターンかな・・と思っていたけれど、後半では結構ずしり、とくる展開があり、
その点では『ぼんくら』『日暮らし』とは区別化出切ると思いますね。
何より主人公の「ほう」が良いです。
なんと愛らしい・・すごく頭なでなでしてぎゅぅっと抱きしめたくなる!!
醜い思惑と陰謀が錯綜する中、一つだけ透き通った光を放っています。切ないほどに・・

この作品は重い・・・と思います。
何より人の気持ちが重い・・!
「どうすればいいんだ!どうしようもないのか!?」というもどかしさと怒りと
時代・「お上」都合に巻き込まれ、翻弄された悔しさも滲み---本当に哀しいです。
ラストは涙、涙・・ですね。






以下はネタバレ






時代とはいえ、何とも理不尽さを感じずにはいられない・・・
と、思えば現代に通ずるものも感じる作品ですね。
結局人間は何十年、何百何千年経っても基本的なものは変わらない。
「ほう」を優しく慈しんでくれた琴江が毒殺されてしまった。
犯人は、自分の男を奪われたと思い込んだ女美弥。
そしてその後ちゃっかり男といちゃついているし。
しかし、最悪なのはその後
美弥は丸藩名家の娘だから、彼女が殺人を犯してしまった事を隠蔽しようとする。
江戸から送られてみた罪人加賀殿を預かる役職・物頭の家が美弥の家だから---
妹を殺され、悔しさに震えながらも丸藩の為に口を噤む啓一郎。
想いを寄せていた琴江が殺されたにも係らず、怯えて沈黙する町役所の同心渡部一馬。
啓一郎の為に耐える女引き手の宇左。
それぞれが丸藩を舞台に苦悩し、苦しい葛藤しており
なんともやりきれない気持ちになる。
しかし、ここで「ほう」も主要人物で登場。
この娘の純粋で清廉な心が一時の温かさと光を映し出している。
ほうの存在は本当に貴重ですねー。

最初は琴江事件を巡った話で物語は進行する。
公では琴江は病死である、となり真相を知る者は
ごく一部に限られ、その「隠蔽」によって起こる事件も発生してしまう。
加賀殿を預かる、という事がかなり「根深い」ものだと分かってくるのだが、
これ以上探ると命の危険に晒されてしまう---
この辺りの緊張感は本当にスゴイですね。
宮部氏の表現力・描写力の力量を感じます。それがまた後半につれて
大きくなっていくのですが、まぁそれは後述します。
最初は「ほう」視点が多いのですが、中盤は宇左が多い・・かな?
彼女は女なのだが引き手で、周囲から馬鹿にされながらも懸命に仕事をしている。
琴江事件の真相を知る一人の人物として、彼女も苦しんでいましたね。
何より啓一郎へ想いを寄せている事で口を閉ざしている。
途中で彼女が「ほう」を引き取る事になり、一緒に暮らすのだが
そのひとときはとでも貴重で幸せな時だったと思う。
しかし、ほんの僅かで「ほう」は涸滝・・・加賀殿へ奉公に出されてしまう。
それは何とか止めたい宇左であったが、そこでもやはり啓一郎へ想いにより
「ほう」を送り出してしまう。
この辺りが「おぉい!!ほうより啓一郎が大事かー!!!」と突っ込んでしまいましたが
彼女の立場からしても断れない、という事がわかります。
でも、結局啓一郎がいいんだな・・と少し蟠りありますね・・・。
そうして「ほう」は一人、丸藩で謎と恐怖の象徴である涸滝へと向かう。

そして後半、丸藩全体が侠気と喧騒に包まれます。
江戸から来た加賀殿が妻子を殺した大悪人であり、彼が曰くある
涸滝に幽閉されている事で、領民全体に緊張とじんわりとした恐怖を与えていたのだ。
そこに重なったのが天変地異。
突然の大雨や藩全体が揺れるほどの雷が発生し、恐怖と不安が入り混じって
皆の間で一気に狂気が噴出---
その後はもう何が何だかわからない状態(爆)
喧嘩や火事、暴動や破壊活動と扇動、あらゆるものが暴発し、藩全体が手の付けられない
状態へと陥る。
引き手として騒ぎを収めようと奮闘する宇左、けが人治療に奔走する啓一郎・・
人も倒れ、建物も倒れていく中藩で一際大きな雷が鳴り響いた。

そしてラストになるわけですが・・・
はぁぁ・・なんと切ない、哀しいものかな、です。
沢山の人が死んでしまいました。
正直、最初はこんなに重い物語とは思わず・・・涙が零れます。
心に残るのは石野さんとの事もそうですが、やはり「ほう」と加賀殿のやりとりですね。
涸滝に来てから「ほう」はいままでと同じような奉公をさせられていた。
違うのはいつも屋敷にいる人達が入れ替わるのと、
ある区域には近づかない事---つまり加賀殿が寝泊りしている区域だ。
しかしある日、その屋敷に曲者が侵入し「ほう」は混乱の中
慌てて軒下に逃げ込んだ。そしてどこかも分からない内
近づいてはいけない場所--加賀殿の部屋の下に入り込んでしまって
側近の者に見つかり、斬られそうになった所を加賀殿に救われる。
それから「ほう」は加賀殿と交流を持つようになり、
やがては加賀殿から習字や算盤を習うことになるのだが・・・
この時間が何とも穏やかで、どこかぼんやりとした陰を落としている。
大罪人で「鬼」とも称されている加賀殿と言葉を交わすうち
彼がどんな人物で、何故妻子を殺害してしまうという凶行に
走ったのかがじわりじわりと伝わってくる-----。
きっと加賀殿は「ほう」の純粋さに救われたに違いない。
そして「ほう」も加賀殿に救われた----
この場面が後になり、涙となって喚起されてきます・・本当に。
そして「ほう」は最後、加賀殿から新しい名前を与えられる
「ほう」は"宝"の「ほう」------
この一言、否一文字に加賀殿の気持ちと、「ほう」という少女が
全て表されているのだと思います。
今まで重くのしかかってきた事件や背景を全て柔らかく包み込み、
悲劇な物語に爽やかな優しい風を送り込んでくれるラストでした。
感動、です。
宮部氏、有難う御座いました!
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Posted at 21:36 | 宮部みゆき | COM(0) | TB(0) |
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