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2014.01.13

龍をみた男

『龍をみた男』読了ー。

龍を見た男 (新潮文庫)龍を見た男 (新潮文庫)
(1987/09/30)
藤沢 周平

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藤沢周平氏の時代物短編集、今回も楽しませて貰いました。
同じような設定で同じような町人等の話なのに何故この様に様々な話を書けるのだろう・・感嘆である。

帰ってきた女

ある日突然鶴助が訪ねてきた。
彼は藤次郎の店で働いていた渡り職人であるが
この鶴助は藤次郎の妹を誑し込んで出奔したならず者である。
その彼が突然訪ねてきた理由は他でもなく、おゆきの事である。
どうやらおゆきは体調を崩し、あまりよくないらしい---
藤次郎はおゆきが家を出て行った時もう縁を切ったという事で
鶴助を突っぱねた。
だがその日、あらましを知った藤次郎で子飼いしている職人の音吉が
おゆきが心配でならず、結局折れる形で藤次郎と一緒におゆきが
居るという場所まで行くことに。
音吉は耳が聞こえるが言葉をしゃべることの出来ない男で
周囲とは溶け込みにくい人間だったが、なぜかおゆきとは気が合い
よく二人で談笑している風景があった。それ故心配も人一倍だったろうと藤次郎は察したのだ。

おつぎ

ある料理屋で三之助は自分をじっと見つめている女中を見つけた。
何故じっと見ているのか、彼女は誰なのか判らなかったが
店を出た後ふっと思い出した。彼女はおつぎである。




龍を見た男

源四郎は姉の子寅蔵を一人前の漁師に育てるため、度々漁へと連れて行く。
彼自身は漁師の間で浮いていて孤立気味であるが源四郎はいつものように漁をするだけだ。
様々な鬱憤は度々岡場所へ繰り出しお気に入りの女と会っている事で憂さを晴らしているが、妻は寡黙であり其の事に関しても何も
言わない女であった。
そんな妻があるひ珍しい生き生きした顔で善光寺に行ってみないかと言う。どうやら由緒ある有名なお寺らしいのだが・・。

逃走

銀助は渡り歩きの小間売りの恰好だが、本職は盗人である。
しかもかなり慎重な盗人で、盗みに入る家をじっくり選び出し
下調べには半年掛けることも厭わない程の用心ぶりだ。
そのおかげか、今まで一度も捕まったことが無い。
小間売りとしては周囲から怪しがられることもなくやっていた。
そんなある日、またも盗みに入る屋敷を見分している銀助の前に
岡っ引きである権三郎に出会い、彼が自分を疑っていることを察知した。
行く先々で度々会う事から権三郎は結構しつこい様だ・・なるべく
怪しい動きに見られないよう、のらりくらりと躱していた。
ある日、銀助は偶然家の中で男女の言い争う声と赤ん坊の泣き声を聞いた。




弾む声

助左衛門と妻の満尾はいつも隣から聞こえる女の子の声を聴くのを
心待ちにしていた。
その声は弾むようで元気いっぱいであり、細々と暮らす隠居夫婦にとって
一つの楽しみである。その声は隣に住む友達を呼ぶものらしく
女の子の可愛らしいものだった。
しかし、ある日突然その声が聞こえなくなってしまったのだ。
妻の満尾は何だか心配になっているようだが、実は助左衛門も気になっていた。



女下駄

下駄職人である清兵衛はお得意先である松屋を訪れていた。
手代の長次郎は今回の下駄の出来も満足そうに眺めている。
そんな長次郎が清兵衛が帰ろうとした時、ぽつりと女房の事を聞いてきた。
長次郎は清兵衛の妻お仲を町で見かけたという---そして隣には
仲睦まじい様子で若い男が一緒だった、との事だった。
お仲は昔苦労したらしいが、清兵衛は深く突っ込むことでも
今更聞く事でもないと詳細を知らなかった。しかし夫婦は仲が良く
お仲も良く働いてくれていた・・・しかしそんな事を聞いてしまった
清兵衛は段々思い悩んでいく。




遠い別れ

新太郎は老舗・糸問屋の後継ぎである。
彼は弥左衛門という高利貸から借金をしている。今日もその弥左衛門
がやって来て催促されるのだが、新太郎は特に返す当てもないのに
あと十日待ってくれと言う。しかし弥左衛門はあっさり「いいですよ」と言い
新太郎は半ば唖然としながらも引き取って貰えた。
しかし、やはり返す当ても知り合いも居ないまま過ごしていると
かつて新太郎が捨てた女、おぬいと出会う。
彼女は今良い所に嫁ぎ、嫁ぎ先真綿問屋で辣腕を振っているという。
彼女は新太郎の借金をどうかできるかもしれない、と持ちかけるが・・・



失踪

おとしは呉服屋徳蔵に嫁いだ。
徳蔵には芳平という父親がおり、年を取って最近特に呆けがひどくなっている。
そんな芳平がいなくなったと気づいたおとしはまた徘徊しに出て行ったのかと
探したが、中々見つからない。
そして戻ると家の前に人相の悪い男が立っていて、芳平を攫ったのだと告げる。
返して欲しければ金をよこせと言って帰って行ったのだが・・・




切腹

丹羽助太夫が周囲の迷惑を知らずに謡の稽古をしている中
息子がある知らせを持ってきた。榊甚左衛門が切腹したという。
助太夫と甚左衛門は昔道場仲間でよく酒を酌み交わすなど
親交があったのだが、次第に亀裂が出来始め碁の勝負でその亀裂が
決定的になった後、すっかり縁を切っていたのだ。
話によると甚左衛門が不正を働き、それが露見して切腹したのだという・・
だが助太夫は親交を絶ったとはいえ、彼がそんな事をするとは信じられなかった。



今回も色々と考えさせられる話ばかりでしたね。
自分の中では逃走と女下駄が好きかなぁ。
最後の切腹はこの中で唯一武士というか・・役職人の話だったが
何となく・・・今の時代にも実際にこんな関係の男たちがいるのではないか、と
感じ入った話でしたな。切腹はないけどね。











以下はネタバレ。













帰ってきた女

これはね・・音吉の心理描写に心掴まされる話だったな。
いざ迎えに行ってみれば、おゆきは想像以上に酷い状態で
ほぼ寝たきりの病状だった・・・藤次郎はその時も音吉の
(無言だが)訴えでおゆきを引き取った・・
月日が経ち、何とか体調も回復してきたおゆきだが、元気になるにつ
また妖しい動きを見せだした・・
おゆきが度々出かけたり、家のお金が少し減りだしたのだ。
「これはまたあかんなぁ」と読んでいたのだが
音吉が偶然出かけたおゆきに遭遇し、そこで事実が判明した。
どうやらおゆきは再び現れた鶴助に金をせびられ、縁を切るつもりで
少しのお金を渡していたのだ。
そしてこれっきりだと告げるおゆきに逆上した鶴助が襲い掛かるが
慌てて助けた音吉が飛び掛かる。そして今度は音吉が暴行を受けるのだが
何とか周囲が気づき切り抜けることが出来た・・・。
うーん、この辺りが何とも・・音吉に対し涙が出てくるシーンですな。
声出ずとも身を挺しておゆきを守るとは、恰好いい!
音吉は微塵も望んでいけないと思っていたけど、自分としては
おゆきと所帯持って欲しいものだなぁ。




おつぎ

これは・・結末忘れてしまったなぁ。すみません。
幼い頃近所に居た怪しい老人の家にやってきた娘おつぎ。
周囲の人から訝しげながらも、おつぎは周囲の子供たちに溶け込んでいた。
そして皆成長し、暫く忘れていたおつぎだったが女中として働いていた。
どうやら老人とは娘か不明だが、やはり肉親であったようで
慎ましく暮らしていたのだが、それまでどうしていたのか、とか
老人はどうなったのか忘れてしまった・・・;
あー・・申し訳ないが割愛!




龍を見た男

この話は無信仰の自分にとって共感を抱いた話。
源四郎は妻が善光寺に行きたいとか、漁師の守り神だとか
いう事に無関心だったし、そんな神様は信じていなかった。
しかし、一緒に漁へ出かけたとき寅蔵が死んでしまい
一人で漁へと出かけたとき霧が立ち込めて帰れなくなってしまう。
その時になり始めて源四郎は普段信じていない神様に
必死で命乞いをする。その姿は現金な奴だ、と思うと同時に
共感もしてしまう自分(爆)
普段は信仰心もなく、お参りも行かない自分が
いざ神頼みしかないと感じたときだけ祈る・・・うん、現金だ;
そして必死で祈っていた源四郎は確かにその時「何か」を見た。

霧の向こうでぼんやりだが、龍のような影を見て
源四郎の船は民家の明かりを見つけたのだ。
源四郎もこれからはきちんと真面目にお参りに行くのかな。




逃走

これは盗人である銀助が見せた一つの良心かな?
偶然見つけた夫婦。そこに放置されている赤ん坊を助けた銀助。
まあこんな極悪両親は現代でもあまり見ないけど・・
自分達の事ばかり考えて赤ん坊放りっぱなしだし
銀助が黙って連れて行ってしまったのに届け出ないばかりか
「親戚に預けた」と嘘を吐く始末。信じられないねぇ。
その赤ん坊を、子供が欲しいが生まれなかった夫婦
岡っ引き権三郎の家にこっそに置いた銀助・・味な事をw
確かにあんな夫婦の傍にいるより、権三郎夫婦に預けた方が
幸せになれそうだもんねぇ。
赤ん坊の世話と自分への嫌疑を見事に逸らした銀助だった。

弾む声

これもほのぼのと温かい話でしたな。
助左衛門と妻の満尾はいつも聞こえてくる女の子の事が気にかかり
少しずつ女の子がどうなったのか調べ始めた。
そしてその子は家の事情で奉公に出されたと聞き、家そのものも
無くなってしまったと知る。
隣の家で声が聞こえているだけの、赤の他人がどこまで踏み込んでいいものか
もどかしい所だったけれど、夫婦の女の子に対する愛情は微笑ましいね。



女下駄

これは良い話だったな!こんな夫婦いいなーという話。
長次郎の話から段々妻お仲の挙動を怪しみだした清兵衛。
これは良い出来だからと懐に取っておいた妻への下駄も
ずっと仕舞ったままだったし、浮気を疑って段々散漫になってきた清兵衛。
「こんなに悩むなら妻に直接聞けばいいのに」と思うのは
まるっきり他人だから、の意見だろうか(苦笑)
普段から清兵衛に対して慎ましく、ひたむきなお仲を見ていると
とても他に男を作っている風には思えないんだけどなぁ・・
と、思ったらやっぱり!目撃された若い男は清兵衛がまだ
会った事のない弟だったのだ。
まったくもー、しっかりしろよ清兵衛。危なかったなぁ。(苦笑)
ここで切り出さなかったら疑心暗鬼になってとんでもない事を
しでかしてしまいそうでハラハラした・・・。
最後妻の為に取っておいた下駄も喜んでくれたしね。
いやはや、めでたしめでたしw





遠い別れ

これはまた何とも・・・かつて捨てた女が自分より立派に暮らし
なおかつ自分の厄介ごとを助けてくれる話なのだから苦笑ものだ。
こんな事が自分に起こったらどう思うかなぁ。
多分悔しいと思うかもしれないけれど、自分は駄目で相手は
一生懸命勤めていたのだから悔しいと思う事も筋違いか(笑)
でもかつて捨てた男の借金を背負うなんて見上げた女子だのぅ。
こういう人物こそ「立派」だと思った。




失踪

これは中々・・・結構喜劇?というような話だった(笑)
芳平という呆けた老人を攫い、身代金を請求されたが
正直払う家族側から見ても「あの老人にそこまで払う事あるか?」と
人攫い一味と値下げの交渉に入る。
「払わないなら人質を殺す」となっても
「それはそれで其方が重い罪を背負うだけじゃありません?
 老人を攫うというのではなく殺すとでは流石にお上の世話になるしかありませんが
 そちらははした金も貰えず仕舞ですよ」
と、いう風に妙に納得のある応酬。
家族側からしても愛らしい娘ならともかく、寝小便垂れる老人では
大金を出す気にはならない・・・残酷だが結構事実である(爆)
結局身代金を値切って値切って芳平を取り返した呉服屋。
あとはいつもの様に日常が繰り返されるだけ・・・
でもまぁ兎に角良かったよかった(笑)




切腹

これはまたがっちり堅い話で締めてきましたね。
かつて親交のあった男が何十年も絶交していた中
不正の責任を取って切腹した。
しかし丹羽助太夫はどうしても甚左衛門が不正をしたと
は思えず、周囲の人への聞き込みや調べで
彼は罠に嵌められたのだと確信。彼の汚名を返上した。
その後甚左衛門の妻が「そこまでしてくれるのに何故生きているうちに
親交が無かったのか」と詰る場面があるが、得てして男同士は
"こういうもの"もあるのではないか、と思った。
親交は無くともお互い認め合っているというのは何だかとても羨ましい気もするな。

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