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2014.04.12

絆―山田浅右衛門斬日譚

鳥羽亮氏『絆―山田浅右衛門斬日譚』読了ー
『鬼を斬る』の続編になりますかね・・・連作短編集。
徳川家御佩刀御試御用役の山田浅右衛門も年を取り、息子たちも産まれて段々貫禄も出てきたであろう頃(爆)
処刑人としての葛藤とそこに息づく人々の人生を取り巻く人情話とも言いましょうか・・
感動と悲哀に彩られた作品集でした。

土壇場
おなみは源兵衛の囲われ身であったが、ある日妾宅にやってきた仕舞屋の千次と恋仲になってしまう。
改修の為通っていたが、情を通じてその後も度々逢っていた二人----
その事を主源兵衛に知られてしまい、毒殺したという罪だった。

生地獄
弥左衛門は名の知れた盗賊であり、一家皆殺しの罪で首を斬られることとなった。
その弥左衛門は捕まる前、五年前自分が盗みに入った倉田屋の一人娘に遭遇する-----


山田浅右衛門吉利の長男吉豊は最近挑戦し始めた首切りに失敗し、落ち込んでいた。
そんな中今度の罪人は信蔵という建具職人がやってくる。
彼は権八という男を殺した罪で捕まっていたのだが-----

病魔
吉利は人胆丸を届けた帰り道、面長で40がらみの女に呼び止められる。
「娘が労咳で人胆丸を下さい」と懇願してきたのだ。届けたばかりなので今は手元に無い、天仁堂で求めよと言いその場を去った。
そしてその後労咳を患った若い娘の死体が揚がったと聞き吉利はあの時の女性ではと思ったが、どうやら母親は別人のようだった。しかし------

斬人剣
山田一門で最近俊英と呼ばれるようになった森谷喬之助。
その森谷は罪人の首を斬る際、見事な居合で切り捨てた。それを見た吉利は罪人を斬る時居合できるものではない、とそれとなく諭すが森谷は自分の腕に自信があり聞く耳を持たないでいた。
そんな頃昔森谷が腕を競い合っていた曽我信之助という男の介錯が山田家に持ち込まれ-----

狂気
山田家に笹本裕七郎という七十石御家人の二男が通っていた。
入門五年目で非常に好感の持てる青年だった。そんな笹本が辻斬りに遭い、滅多斬りにされてしまう。
その切り口の残忍さからも怒りを覚える吉利。その辻斬りは志村又十郎という冷酷な男だった。

志士
石沢栄次郎は長州藩士で入門一年目だった。
長州を脱藩した門倉平右衛門と高桑一平が間部下総守を斃そうとして捕まってしまう。
彼らの処刑を請け負った吉利であるが、二人は陰謀に巻き込まれただけだから助けて欲しい、と石沢は訴える。
しかしそんな事は不可能であり一蹴した吉利。刑の執行は予定通り行われた。
その後石沢は山田家に近づかなくなったのだが------

どれも山田家にやってきた首切り・介錯の話になっているが・・何とも・・・
人の人生とはいつ、どんな時に転がるのか分らないものでありますねぇ。
人斬りと言われた仕事を請け負う人達の心も、首を斬られる人達の心もどれもまた人の世に生きる
苦しさや悲しみを纏うものです。
時代劇や時代小説で出てくる罪人達とその家族や知人たち、
首を斬られる人達最期の思いとは・・・

仕事とは言え、日々首を斬るという事から周囲には忌み嫌われている山田家であるけど・・
正直何も知らない周囲の人達がそんな態度取る権利(?)はありませんよね。
だったらお前らがやるか?とか聞きたくなっちゃう。
誰だって仕事で人の首を斬り落とす事なんかしたくない。それでも誰かがやらなくちゃならない・・・その誰かの話ですから。
今の時代だと首切りではないが死刑囚の刑執行人とそのスイッチを押す人たちは確実に居る訳だし
その人に対して嫌う態度とる権利なんてないと思う・・。自分がやれ、と言われたらできない;
何でしょうねぇ・・・刑の執行で人を斬るのと、憎くて人を斬るのとでは後者の方が躊躇なく出来そうな気がする。
同じ「殺す」行為なのに衝動的に計画的に「殺す」事の方が出来そうな気がするのは何故だろう。
「仕事」というフィルターより「執行する」というフィルターがより儀式的なニュアンスを出しているからだろうか?

この作品は鳥羽氏作品の中で一番心に沁みた短編集でした。
様々な理由で死罪となった人達の人生が悲しくて、儚い-----
今と違って昔はすぐ首を斬られてしまっていたのですね。勿論重罪も多かったようですが。
死罪になっても飽き足らないような極悪人は一部でしか出てきません・・・
多くの人達は「普通」だった人達。
その人たちの最期を見届ける山田浅右衛門はどんな思いだったろうと・・
そしてどのような人生だったのだろうと・・鳥羽氏は丁寧に描いていますね。
実在の人物故に他の作家さん達も山田浅右衛門を題材にした作品を書かれているようなので
機会あれば読んでみたいですね。
実在の人物でも書き手によって印象が違ってくるのは読者として結構楽しい所。












以下はネタバレ(内容結末に触れています)。














土壇場
おなみは女郎として身請けされ妾となるが、その後の"恋"の話ですね。
うぅ・・切ないし、哀しいな。
女郎といえば色恋を「商売」にする仕事で今頃"恋"も何もないだろうと思っていたのに
まさか今になってこんな純粋な恋をしてしまうとは・・・やはり人はいつまでもそういう心が残るものなんだなぁ。
仕舞屋千次と恋仲になり、囲っている源兵衛に知られてしまった事で毒殺してしまう。
当時は誰にも気づかれなかったが島造親分に目を付けられ、捕まってしまった。
おなみは死罪を申し付けられたが、千次は実行犯ではないので島送りという処罰である。

だがおなみはそれを知らないまま土壇場に引き出され
共犯者として千次も捕まってしまった千次と同じ世に行けると呟いた。
何とも切ない思い・・死してやっと二人は一緒になれると希望を持っているんですね。
最期の最期ですがるような希望の呟き・・・吉利はそのまま刀を振り下ろした。

生地獄
弥左衛門は所謂凶悪犯である盗人だった。
彼は盗みに入った店の人達は皆殺しにしていたからだ。
そんな弥左衛門も唯一生き残した人物がいた。倉田屋の娘である。盗みの際姿を見られたが、僅かな仏心か・・その娘だけは生かして逃げたのである。
年月は流れ、偽名を繰り返し逃げ続けていた弥左衛門は千代次という女郎に出会う。
その女郎こそが、あの時生き残した少女だったと知った弥左衛門だが、千代次は気づかない。
はそれとなく生い立ちを聞き千代次は一家は皆死んだが自分だけ生き残った、と話し始めた。弥左衛門は「生き残って良かったじゃないか」と言うと千代次は「生かされて本当に生地獄だ」と語る。それを聞いた弥左衛門は「あの時殺しておけばよかったんだ」と思う湯になっていく・・・そんな折島造親分に身元を割られ、捕縛されてしまった。
彼の首を斬った吉利は弥左衛門から千代次に「あの時殺しておけばよかった」と伝えてくれと言う。
吉利は千代次の元を訪れ、言伝を伝えた。
それを聞いた千代次はかえって振り切ったようで「親や弟の分まで精いっぱいいきてやるんだ」とキラキラさせた。
何だろうか・・絶望と悲劇の果てにたどり着く最後の希望みたいな光を感じました。
結局は弥左衛門の言葉で生きてやる、と意気込んだ千代次。弥左衛門が本当に「殺しておけばよかった」という言葉にも違う意味合いを感じますね。
一かを殺した盗人と一家を殺された娘の遭遇・・そして「やっぱりあの時殺しておけばよかった」という言葉を残すのに全然陰鬱な雰囲気を感じない。むしろすっきりとした光明さえ感じる話でした。


感想では割愛していますが(爆)度々「山田家の事情」が織り交ぜてある連作短編集です。
長男である吉豊は父吉利の後を継ぐため、据物斬りや簀巻き斬りなどを行っていたが、最近は遂に実際の首切りを行うようになっていた。しかしやはりそこは人、動揺して身体が強張り緊張と恐怖で刀が乱れてしまう。
っしてまた新たな首切り依頼が舞い込んだ。
建物職人信蔵。
彼もまた・・死罪とは重い・・悪人とは程遠い理由で首を斬られる男でした。
彼はある日、閻魔堂の軒下で蹲っている母娘を介抱する。昔亡くした妻と娘の面影を感じた信蔵は母娘が気になり、度々二人の元を訪れるようになる。母親はおまさ、娘はお菊。お菊はまだ幼子であったが夫の権八はよそに女をつくって出て行ってしまったという。
通う内段々惹かれあう信蔵とおまさ。しかしそんな頃夫の権八が戻ってきて二人の仲を知り襲いかかってきた。咄嗟に抑えようとする信蔵だったが、気づくと権八が死んでいた。はずみで殺してしまったらしい・・。
おまさとお菊に累が及ばぬよう町方の尋問にも耐えていた信蔵だが、遂に二人とのつながりがバレてしまったため白状し、斬首となった。彼を斬ったのが吉豊である。
こんな男なので何とか安らかに斬って欲しい・・とハラハラしたが、何か吹っ切れたのか吉豊は信蔵の首を散らすことなく首を斬れた。こうやって斬首執行人はまた進んでいくのだろうと思った。

病魔
この話が一番悲しくて・・心に残りました。
山田浅右衛門一家では代々"人胆丸"という薬を売っている。
首切りをした罪人達の肝で作った妙薬である。当時死病と言われていた労咳に効くと言う触れ込みで高値で売られていた。
その薬を作っているのが山田家である。
その薬を知っているのであろう、40位の女が娘のために薬を譲ってくれと言いに来たらしい。
必死な面持ちであったが今は手元に無いと断った吉利。
その後労咳を患った娘が身を投げたと聞いて焦ったのだが・・・どうやら別人らしい。
一方吉利に薬を懇願した女性はおよね。お房という娘が労咳を患って寝たきりとなっていた。
弥之助という夫の間に庄吉という息子もいたが、弥之助はお房が労咳になってから家に居つかなくなっていた。貧乏で食うのに困る生活の中、高価な"人胆丸"を買うことなど出来ないと判っていても娘のため吉利に取りすがったのだ。
だが貰ったとしてもおよねには代金を支払う余裕などない。半ば諦めの中お房の看病をしていたおよねだが、半年後お房はなくなってしまう。悲哀に暮れるおよねだったが、夫弥之助が家に戻ってきて仕事に精を出し始めたのが唯一の慰めであった。そんな中新たな悲劇が起こる------今後は庄吉が労咳に罹ってしまったのだ。
狂ったように家を飛び出したおよねは必死で薬屋に行き"人胆丸"を求めた。
およねにお金がなさそうだと主人は薬を渡すのを躊躇っているが、必死なおよねはその主人を突き飛ばし薬を掴んだ。
しかし、その時打ち所が悪かったのか主人は死んでしまったのだ。強盗殺人の罪でおよねは死罪となってしまう・・・。
最期土壇場に引き出されたおよねを見て「あの時の女だ」と気づく吉利。
薬を求めて死罪になったのも知っていた・・・
およねは口から一分銀を出した。罪人はこの銀で自分の首を洗ってもらったりと役人に最後のお願いをするのだ。
およねは「これで息子に薬を飲ませてやってほしい」とお願いする。
吉利は「必ず、必ず飲ませてやるぞ」と約束する。
六袋分の"人胆丸"を持っておよねの長屋にやってきた吉利だが、そこに息子庄吉も弥之助もいなかった。
近所から話を訊くと、息子が労咳になったと知った父親が息子を縊り殺し、そのまま姿を消してしまったのだと言う。

最期の最期まで・・・悲劇でしかない。
せめて庄吉にたくさんの"人胆丸"を飲ませてやれば・・・と涙の溢れる話でした。
唯一はその事を知らずに済んだおよねでしょうか・・・でもやはり哀しすぎます。どうか、誰か・・この悲劇は止められなかったのでしょうか。
およねはお房の看病もし続け、細々ながらも必死に生きてきた心優しい女性-----
こんな事で死罪となり首を斬られることか、残酷過ぎる労咳か、薬を買えぬ貧乏さなのか・・・
どれかひとつでも救いを見たかったです。

斬人剣
これは正に"傲慢"を絵に描いたような話ですね。
森谷喬之助は確かに俊英と謳われたほどの腕前だが、それを驕り周囲の・・そして師匠の話さえ軽んじていた結果、自分は悲劇に見舞われてしまう。
かつてのライバル、曽我信之助の介錯を引き受けた森谷は曽我の最期の頼みである合図をしてから首を斬ってくれ、という言葉を無視し腹切りの途中で切り落としてしまう。曽我を慕っていた弟子達にそのことがバレていて森谷は彼らによって斬られてしまう・・という結末だ。
いくら俊英だ天才だと言われても人の話を聞かないのは良くない。(当たり前)
師である山田浅右衛門はいつかこうなる事を判っていたようですがね・・・うーん、まぁこういう人の気持ちばかりは他人がいくら言っても届きにくいもんですからね。

狂気
将来有望で人当たりも良い若者笹本裕七郎が無残に殺されてしまう-----
世の中の不条理を判りやすい形で表していますね。
そして殺したのは志村又十郎----理由は簡単。金を奪い、人を斬る事に快楽を覚えるためだけだった。
珍しく怒りを表した吉利だった。
結果志村又十郎も裁きを受けるのだが、結局笹本裕七郎とその家族が救われる訳でもなくただ哀しさだけが漂っていた話ですね・・。辻斬りは今でいう通り魔か・・時代違えど人がやる事は変わらないね。

志士
石沢栄次郎は同じ元長州藩の仲間を助けられなかった後山田家によりつかなくなった。
そして尊王攘夷を掲げる吉田松陰を師と仰いでいる-----吉田松陰が捕まり石沢は松陰を脱獄させるため牢に火を放とうとするが、捕まってしまう。そして仲間と共に今度は石沢が斬首となる。
その斬首を頼まれたのは・・・やはり山田浅右衛門。

罪人として斬首するのではなく、白装束で"介錯"する。吉利は最期師匠の務めとして石沢を武士として死なせた。

こういう所が「武士」なのでしょうなぁ。
生き様もそうだが、死に方を重んじるのが「侍」「武士」と呼ばれる人達なのだろうと感じました。
「馬鹿なんじゃないか」とか「無駄な意地で死ぬことないのに」と思う事もあるが・・・。
正直「時代の犠牲者」も多かったのだろうと思います。
でも現代の「サムライ」連呼には辟易しますね・・・
きっと「サムライ」と言えば格好良いし、海外にも人気だからやたらと言いだしたのでしょうが結局恥をかいているのではないかと思う。なので自分はサムライとか言わない。
・・・勝手な意地ですが(爆)
サムライはいるかもしれないけど、本当の侍はもう死に絶えてしまった・・・のかもしれないな(希望は残す)
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